水質検査項目には全く検出されてはいけないもの、数値が高いと健康上支障のあるもの、生活への影響が大きいもの、そして値の大きな変動により水質の異常を判断するものなどがあり、それぞれ互いに関係づけながら、総合的に水質を判断します。
検査の結果が「不適合」の場合どのような検査項目で不適合になっているかに注意し改善するよう検討する必要があります。検査機関や保健所などと十分相談することが必要です。
では、これらの各項目について少し学んでみましょう。
水質検査の見方について
硝酸態窒素・亜硝酸態窒素 | たんぱく質などの有機物の窒素分は、時間とともに亜硝酸性窒素から硝酸性窒素に変化していきます。 従って、水中に多量に含まれるということは、生活排水やし尿の汚染があったり、田畑の窒素肥料の影響などが考えられます。 硝酸性窒素・亜硝酸性窒素を多く含む水は、特に生まれたばかりの赤ちゃんに対してメトヘモグロビン血症という呼吸を阻害する悪影響があることが知られています。 従って、基準を超えた水は、少なくとも赤ちゃんのミルクなどに使わないようにする必要があります。 |
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塩素イオン |
人間の身体や食品の中にも含まれていて、特に海水に多く含まれています。基準の200㎎/lというのは、塩味を感じない程度として決められたものです。 塩素イオンは地域差がありますが、ある程度は必ず含まれているものです。急激な値の変動により、水質の変化を知る目安となります。 井戸水に人畜のし尿等が混入すると、平常値よりもずっと多くの塩素イオンが検出されるので、このような場合には、その原因を直ちに調べる必要があります。 |
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有機物(全有機炭素(TOC)の量) |
私たち人間をはじめ、動物,植物の体は有機物で出来ています。水が土壌の中で浸透していくに従って、また河川を流れるにつれて、これらの動植物の死がいや排泄物などは、微生物の働きによって分解され浄化されます。 しかし、汚染がひどくなると、自然の浄化能力を超えてしまいます。 従って、有機物の量は汚染の程度を知る良い目安となります。 |
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大腸菌 |
水道水で検出された場合は、消毒の不備や配・給水系統等での汚水混入の可能性が高いと考えられます。 消毒法としては、一般的に塩素剤による滅菌ですが、他にオゾンや紫外線等による方法もあります。 |
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一般細菌 |
病原菌は通常、他の細菌に比較して、塩素消毒に対する抵抗力が弱いので、一般細菌を汚染の指標としています。 地下水の中の一般細菌数は余り変化しないので、急に増えた時は、汚染された可能性があるといえます。 |
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pH値 |
地下水は、二酸化炭素が多く含まれているので、微酸性のことが多いようです。 従って、金属を腐蝕しやすく、配管やポンプが錆びやすいので要注意です。 井戸水やボーリング水は水質の変化が少ないので、急激に酸性やアルカリ性に変化したら、工場排水や汚水などの混入が考えられます。 |
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臭気・味 |
井戸水では土やカビの臭いがすることがあります。 味は地質や海水の影響によることや鉄やマンガンなどの混入、それに加えて汚水の混入によることがあります。 いずれも異常な場合は、飲料水として不適であるばかりでなく、原因の追及と対策が必要です。 |
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色度・濁度 |
濁度は水の濁りの程度を示したもので、原因は主に粘土や粗有機物によるものですが、浮遊している粒子の中に細菌が取り込まれている場合もあり要注意です。 いずれも異常な場合は原因に応じて浄水器や除鉄装置,除マンガン装置を取り付けることが必要です。清澄な水は無色透明です。 |
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フッ素 |
地層中に広く分布しており、また食品中に微量存在しています。 従って、水中のフッ素は地質による場合と工場排水の混入による場合が考えられます。 食品としては緑茶や魚介類,海産物及びその加工品に多く含まれています。健康への影響としては高濃度の場合は骨の形成不良が起こることが考えられます。 また高濃度であれば歯に斑点を生じる斑状歯になり、適度の濃度の場合には虫歯予防に役立つと言われています。 外国にはフッ素を水道水に添加している所もありますが、日本では添加していません。 |
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ヒ素 |
ヒ素化合物は、ガラス,染料,顔料,医薬品,農薬等の原料に用いられますので、水中に溶出してくることもあります。ヒ素の慢性障害としては、爪や毛髪の萎縮、肝硬変、知覚麻痺があります。また脳炎を起こして死亡することもあります。 |
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カドミウム |
カドミウムは、合金,めっき,顔料,ゴム,写真材料,窯業材料等の広い用途があり、水中に溶出してくることもあります。 カドミウムの慢性中毒症としてイタイイタイ病があります。 |
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カルシウム・マグネシウム等(硬度) |
10~100㎎/l程度の水が「おいしい水」であると言われています。 硬度が高すぎると石鹸の泡立ちが悪く、よごれが落ちにくくなることが知られています。 また飲み水としては、高濃度であると下痢を起こしたり、胃腸障害を起こすと言われています。 図:who水質ガイドラインより |
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鉄 |
土壌中に多量に存在する元素ですから、地表水(河川水)、地下水にも含まれていることが多く、赤水として洗濯物を着色したり、お茶の味を悪くするという日常生活への影響がかなり考えられます。 基準値0.3㎎/lの値もこの観点から設定されています。 |
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マンガン | マンガンは自然界に広く分布していますが、鉄と共存して、その含まれている量は1/10程度です。消毒に用いる塩素によって微量に含まれている場合でも着色することが知られています。基準値0.05㎎/lの値は、この観点から設定されています。(黒水障害) マンガンも必須元素の一つで、不足すると成長の鈍化、貧血、生殖障害などがみられます。高濃度のマンガンは有毒で、急性中毒として神経障害を起こし、倦怠感,頭痛,関節痛などを起こします。また、慢性中毒をして不眠,筋萎縮,言語不明りょうなどを起こします。 |
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亜鉛 | 亜鉛は、自然界では植物の胚、鶏卵、いか、たこなどの魚介類や動植物界に広く分布していますが、自然水中に存在していることはあまりありません。 従って、水中の亜鉛は、鉱山排水や工場排水などの混入、あるいは亜鉛メッキ鋼管などの溶出による場合が考えられます。 水道水中の亜鉛は、給水管,給水装置からの溶出による場合が多く、白濁や不快な収れん味を与えます。また亜鉛は腸管からの吸収が少ないので経口摂取による健康障害は、特別の場合を除いてはあまり問題になりません。 |
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水銀 |
アルキル水銀に代表される有機水銀は腸管からよく吸収され、とくにメチル水銀は脳神経に分布して特異的な神経症状を起こします。上下肢,口周のしびれ,知覚異常,言語障害,歩行困難,狂躁状態を起こして死亡することがあります。 これに対して、無機水銀は吸収率が低く、尿中への排泄が比較的に多いので、その毒性はメチル水銀と比べれば低くなります。 |
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鉛 | 地殻中の鉛の存在量は比較的少なく、河川中には鉱山廃水に由来して溶存していることがあります。鉛は人間生活に古くから利用されている金属ですが、中毒の歴史も古いものがあります。重症では貧血,腹痛,腎障害,不妊を起こします。 低濃度でも、鉛は神経毒ですから、特に幼児の発育や精神の発達の遅れを起こす可能性があり、要注意です。 また、最近は鉛管からの鉛の溶出の問題がクローズアップされており、基準が強化された項目の一つです。 |
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六価クロム |
六価クロムとその化合物は、メッキ,顔料,皮革や織物工業,触媒,木材防腐剤として利用され、工業活動により環境中に放出される場合があります。 六価クロムの急性中毒症状としては、激しい嘔吐と下痢,腎臓障害などがあり、慢性毒性としては肝炎を起こします。 |
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セレン |
天然には硫化物や硫黄鉱床などに多く含まれています。自然水中にも含まれることがありますが、その多くは鉱山排水や工場排水の混入によるものです。 |
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シアン |
シアンの中毒症状としては、めまい,頭痛,けいれんなどがあり、高濃度の場合は呼吸中枢麻痺を起こし、死にいたる場合があります。 |
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農薬類 |
4種類の農薬とは土壌線虫殺虫剤の1,3-ジクロロプロペン、土壌処理用殺菌剤のチラウム、除草剤として畑地や芝生に使用されるシマジン及び水田に使用されるチオベンカルブです。 農薬類の毒性としては、皮膚や粘膜に対する刺激と神経系統に対する障害があります。 |
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揮発性有機化合物 | 水道法による水質基準で、規制の対象となっているものは17種類ありますが、これらは水中の起源から2つに分類されます。浄水処理過程での塩素消毒による副生成物と工場排水などの流入による有機化合物です。 塩素消毒副生成物(トリハロメタン)とは、水中に含まれる有機物(フミン質)やし尿、工業排水中の有機物と塩素が反応してできたもので、メタンの4個の水素原子のうち3個が塩素原子や臭素原子で置換された化合物です。 トリハロメタンというのはクロロホルム,ブロモジクロロメタン,ジブロモクロロメタン,ブロモホルムを指します。 工場排水などの流入によるものとしては、ドライクリーニング洗浄剤や金属部品の脱脂洗浄剤(トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,1,1,1-トリクロロエタン等)やこれらの物質の土壌分解生成物、他の有機化合物の製造原料や農薬などがあります。高濃度の場合の症状としては、頭痛,めまい,おう吐等です。 これらの有機化合物は揮発性が非常に高く、地表では大気中に拡散するため、表流水中ではほとんど検出することがありませんが、特に地下水に残留することから汚染物質として重要視されています。 |