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PCBの拭取り検査について

私の所属する環境科学グループでは主に海や山や川をフィールドとして試料採取等の環境調査を行なっていますが、時に工事現場や工場等のフィールドに出向くこともあります。前者では水、土、大気等を調査対象とし、後者では製品、廃棄物等を調査対象とすることが多く、その中にPCBのサンプリングがあります。今回はPCBの拭取り検査についてお話します。

古い建物に取り付けられている蛍光灯や、トンネル内のナトリウムランプ等に付属する安定器にはPCBを含有しているものが存在します。この場合のPCBは安定器中のコンデンサと言われる部品に絶縁油として含まれるもので、建物の取り壊しや設備更新で蛍光灯等を取り外すときに絶縁油中のPCB含有の有無を検査し、分別して処分されることとなります。

PCB 1 PCB 2

出典:照明工業会「安定器・制御装置ガイドブック」

さて、PCB含有が判明したコンデンサを安定器から取り外す際に、絶縁油が漏出して安定器を汚染してしまうことがあります。汚染された安定器は低濃度又は高濃度PCB汚染物として高いコストと厳しい管理の下処分しなければいけません。安定器1つならまだしも、1つの構造物に安定器が何十、何百とあったらいかがでしょうか・・・

こういった場合に、安定器1つ1つを個別に汚染の程度を評価するのが通常ですが、複数の安定器を1つのロットと見なし、その中の代表試料を拭き取り、PCB含有量分析を行なうことが認められています(低濃度PCB、高濃度PCBの判別について)。このような評価方法を用いると、検査にかかる時間・コスト、処分に係る労力・コストを大幅に低減することが可能となります(国は自ら定めた期限までに国内のPCBを処分するため、事業者や個人がPCBの検査・処分を迅速にしてもらえるようこのように取り計らっているのでしょう。)。

清水PCB←拭き取りの様子

写真は某事業所において廃安定器の拭取りを実施している様子です。拭き取り行なう範囲の面積を測り、ヘキサンを染み込ませた脱脂綿で丁寧に拭き取ります。あなたの周りに処分すべき古い安定器、またはPCBの含有が疑われるトランス・コンデンサ等がありましたら、一度弊社までお問い合わせください。

投稿STAFF 清水